シーズン2 第2回 それはそれは飛び立つように嬉しく
2017年1月18日放送
マスター:あぁ、富田さん、いらっしゃい!
富田さん:こんにちは、マスター、きょうは何だか明るいですね。
マスター:あはははは。いえね、あの先週お話していた彼女なんですけれども。
富田さん:あぁ、あの待ち受けにしている・・・。
マスター:あぁーそうそうそう・・・。あ、見ます?
富田さん:え?うん、結構です!
マスター:
まぁ、その彼女に「付き合って下さい」ってLINEしたら「ちょっと考えさせて下さい」って返事が返ってきたんですよ!これって「脈あり」ってことですよね!ね!ね!富田さん!
富田さん:うう・・・いきなり断れるよりは、少しだけ、可能性がない事もないかも、ですね…。
マスター:うんうんうん、この胸のトキメキをどう表現したらいいか…んっふふふ。
富田さん:じゃあマスター、幕末・日本のSAGAを代表する人物、10代佐賀藩主・鍋島直正公のこんな言葉がぴったりなんじゃないですか?
マスター:あぁー、教えてください。
富田さん:「それはそれは飛び立つように嬉しく」
マスター:ぬぉ~…今回は私でも理解できそうですね。
富田さん:
時は1858年幕末、初めての蒸気船・オランダの「電流丸」が長崎に来航します。
ちょうど視察のために長崎に出張中だった直正公はすぐに乗船します。
そして長崎から佐賀城に帰り着いた翌日、早速、蒸気船の様子について、江戸に住んでいた長女の貢姫に直筆で書き送った手紙が今も残されているんです。
マスター:ほぉほぉ・・・。
富田さん:
“このたび、私がオランダ人に注文していた蒸気船が長崎に到着しました。
「それはそれは飛び立つように嬉しく」思いました。”
マスター:あぁ~・・・。
富田さん:
“ひとまず乗船して船内を見廻ったところ、誠に奇麗な船でした。
この船にはオランダ人キャプテンのみならず、その奥さんも乗船していたんです。”
マスター:う~ん。
富田さん:
“西洋の女性が長崎に来航するとはきわめて珍しいことです。
この奥さん、年齢は24歳。妊娠7ヵ月だそうだ。目は猫の目のようにて、鼻は高く、
髪の毛は赤毛にて候えども、色は白くよほどの美人と申すことにて候。よほど私に惚れ込んだと見えて、通訳の方ばかりにいて私の方には一向に近づこうとしなかったぞ。
背丈は私よりも15cm程高かったが、性格は優しくて「笑い声などは、日本人女性と同様で、かわゆらしきことにて候」。”
マスター:その時の直正公の気持ち、分かるなぁ。
富田さん:
さらに手紙は続きます。
“この女性もよほど自慢と見えて、自分の髪の毛を見せてきたので、髪の毛をひっぱったり、頭をぐるぐるなでまわしたところ、よほど嬉しがり候様子にて、髪をほどいて見せてあげようかとしてきたので、結んでいる髪をわざわざとかなくてもよいと手真似(ジェスチャー)をしたところ、髪をおろしてみせてきてくれた。
「何べん髪をひねり候ても、手よごれ申さず候。誠に珍しきことにて御座候」「油は少しも付け申さず候」。”
マスター:おぉ~・・・まぁ日本人とは何もかもが違う異国の女性に、かなり興味津々だったようですねぇ。
富田さん:
そうなんです。この時、直正公は45歳。手紙を書き送った長女が20歳ちょうどですから、娘とほぼ同世代の初対面の人妻を、まずは注意深くジロジロ見て観察、そして触れる、髪の毛をなでまわす。けっこう密着して触れあっていますけれども。これが直正流の異文化交流の現場なんですね。
マスター:あぁ~、まだそれが許されるというのが直正公なのかもしれませんね。
富田さん:
そうなんですよねぇ、異文化や外国人に対する好奇心、無邪気と言えるほど自ら接していっていますし、全く遠慮も感じさせませんよね。
髪の毛が赤いとか鼻が高い、何度髪を触っても手が汚れないのは珍しい、油をつけていないなんて、といったようにやはりよくよく観察して日本人との違いに純粋に驚く。知的な好奇心の持ち主だったんですね。
マスター:なるほど。スキンシップとそれを上回る好奇心。う~ん、今後の参考にします。
富田さん:
マスター、あくまで「ほどほど」にしといた方がいいですよ。
じゃあ、ご、ご馳走様!!
マスター:
う~ん、当時の直正公と、今の私は同い年・・・。
この積極性は見習うべきものがありますねぇ。えっへっへっへ・・・。