シーズン2 第3回 江戸は遠からず異人ばかりになるだろう。イヤなることに御座候
2017年1月25日放送
富田さん:こんばんは!マスター。(返事がない)マスター?
マスター:あぁ~富田さん、いらっしゃい。
富田さん:どうしたんですか?頭抱え込んじゃって。
マスター:
いやね、この前の彼女からLINEの返信が来たんですが「マスターのこと、キライではないけれど」って書いてあるんですよ。
これって、「好き」ってことですよね!?
富田さん:
う、う~ん・・・あ、そうだ。
きょうも幕末日本のSAGAを代表する人物、10代佐賀藩主・鍋島直正公の残した手紙をマスターに紹介しましょう。
マスター:お!うんうん、うんうん。
富田さん:
「江戸は遠からず異人ばかりになるだろう。イヤなることに御座候」。話はアメリカ人、ペリーの要求などによって日本が開国して間もない頃。
直正公は、オランダ人を長崎の自宅に招いて宴会を開いたり、佐賀藩が築いた砲台をオランダ人に見せるという約束をしたりしまして、かなり親密な関係を深めています。
マスター:ほうほうほう。
富田さん:しかし長崎から佐賀城に帰ったその日、江戸にいる娘さんからの手紙が届いていまして、直正公はその内容に目を疑うんです。
マスター:ほう。
富田さん:
「江戸では最近、城下町の中をアメリカ人や、オランダ人たちが馬に乗って徘徊しているらしい。しかも佐賀藩邸のすぐ近くの場所を」
この手紙に対する直正公直筆の返信には、「江戸は遠からず異人ばかりになるだろう。イヤなることに御座候」とありまして。
マスター:うん。
富田さん:外国人が溢れかえることへの不安と嫌悪感を漏らしているんですね。
マスター:なるほど。
富田さん:開国したことによって、江戸の町中に外国人が溢れる。そういう状況は直正公にとってはすごくイヤなことだったんですね。
マスター:はぁはぁはぁはぁ。
富田さん:
でも一方で、同じ手紙の中で直正公は、「今日佐賀に帰ってきたばかりなのだが、長崎では毎日のようにオランダ人と面会する機会に恵まれて、誠に面白い刺激的な毎日だったぞ」と伝えているんですね。
マスター:そうそう。彼女も一体、どっちなのか分からないんですよねぇ。
富田さん:
マスターの想ってる人が、どう考えてるかは分かりませんけれども。
この時の直正公には、実は一貫した考えがあったんです。
マスター:ほう。
富田さん:
外国人の窓口として決められた場所、つまり長崎で、オランダ人と友好的なお付き合いをすることには、すでに江戸の初め以来、200年以上の伝統が蓄積されています。
マスター:うんうん。
富田さん:
しかし、開国したことによって新しく開かれた港の周辺のみならず、将軍様の御膝元の町である、江戸の町なかにまで外国人が溢れて、しかも我が物顔で馬に乗って闊歩しているという状況は今までなかったことなんです。
つまり直正公の一貫した考えというのは、伝統や秩序が保たれているかという点にあるんですね。
マスター:うん。
富田さん:
だから長崎での友好的な交流は、伝統的な形なのでOK。江戸の秩序を乱す恐れがある形はNGなんです。当時の外交問題は、開国したいとか、拒否したほうがいいといった単純な二択問題というわけじゃないんですよね。 わが国の暮らしの安全が脅かされる場合とか、日本の伝統が軽く見られるような場合に、特に直正公は外国人を拒否しているんです。
マスター:はい。
富田さん:
むしろ、西洋文化の導入や西洋人の来日、これを全面的に歓迎していた殿様ではなかったんですね。
マスター:そういうことなんですねぇ~。
富田さん:外国人に対する、直正公の複雑な心理を読み解くことのできる貴重な直筆の手紙です。
マスター:なるほど~。ってことは彼女の「嫌いじゃないけれど・・・」これも、直正公と同じでいい意味で悩んでると解釈できますよねぇ~。
富田さん:
う~ん。そうかもしれませんね。直正公の心配をよそに、いまの日本は、東京はもとより全国各地に、世界中のいろんな国の人々が平和に暮らしていますから。
「案ずるよりも産むがやすし」じゃないですか?マスター。
じゃ、ご馳走様でした。
マスター:
あぁ~、ありがとうございました。
なるほど…ん、次のLINEの内容は「開国して、私という新しい文化に触れてみませんか」
んーっ!よし、これで決まりだな!