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維新の「志」コンテンツコレクション

シーズン2 第4回 41年前の赤子、ぴんぴんと致し候

2017年2月1日放送

 

マスター:あぁ富田さん、いらっしゃい。

富田さん:どうしたんですか?マスター!またまた頭を抱え込んじゃって。

マスター:いやね、例の彼女と、LINEのやりとりが続いているんですが・・・。

富田さん:おお、いいことじゃないですか!

マスター:
それが「私には年老いた母がいます・・・」と来たんですよ。
彼女とはともかく、お義母さんと仲良くやっていけるか心配で・・・。

富田さん:(心の声)いや、彼女もそんな深い意味で送ったんじゃないと思うけどな~。

マスター:どうしましょう!?富田さん(半泣き)

富田さん:
う~ん…じゃそうだ、きょうも幕末・日本のSAGAを代表する人物、10代佐賀藩主・鍋島直正公の残したこんな言葉を紹介しましょう。

マスター:待ってました お願いいたします。

富田さん:「41年前の赤子、ぴんぴんと致し候」

マスター:ん!?赤子がピンピン!?

富田さん:
話は、直正公の生い立ち。直正公は生まれも育ちも江戸の方です。江戸の佐賀藩の御屋敷で成長して、17歳で藩主となって生まれて初めて佐賀の地を踏みました。

マスター:ほう。

富田さん:「貞丸様」と名乗っていた幼少期の直正公は、江戸でじっくりと将来の藩主に相応しい人格や学力を身につけていたんです。

マスター:ええ。

富田さん:
儒学や武術などを学ぶ学齢にあたる10歳頃までは、江戸の佐賀藩の御屋敷の中にいるお姉さま方から生活面などを厳しく育てられます。
その育ての親と言われる女性が、直正公より34歳年上の磯濱さん、という女性なんですね。

マスター:ほほう。

富田さん:
彼女の教育スタイルは、自由主義ですが放任主義ではない。
例えば、御屋敷では年齢の近い佐賀藩士の子供たちが貞丸様のお遊び相手に選ばれて、一緒にお庭で木登りをしたり、取っ組み合いをして遊ぶんです。

マスター:ってことは、わざとギリギリで負けるとか接待ゴルフ的な配慮を子供たちにさせていたってことですよねぇ。

富田さん:それが違うんです。

マスター:ほう?

富田さん:
幼い子供同士ですから、遊ぶのも本気なんです。
直正公は、いつも腕っ節の強い男の子に投げられて泥だらけ。
そんな時、磯濱さんはケガをしないよう見守りつつも、子供たちなりの社会性を重んじて一言も口出しはしません。一言いうのは遊びが終わったあと。
「貞丸様、あなたはいつもお弱いですね」とグサリ。

マスター:うわぁ…確かにその一言はちょっと残酷ですけども、心に響きますよねぇ。

富田さん:こういう言葉をあえてかけることによって、貞丸様の健全な反発心や活力を養ったと伝えられているんですね。

マスター:なるほど~。

富田さん:
こうして厳しく育てられて、やがて、藩主となった直正公が最も力を注いだ仕事が、長崎の港の警備です。 

マスター:ええ。

富田さん:
その熱心な警備ぶりが幕府のお褒めに預かりまして、ご褒美の印として徳川将軍家に伝わった刀を直正公が拝領するという栄誉を受けるんです。武家である大名家が将軍様から刀を拝領するのは最上級のご褒美。

マスター:うん。

富田さん:もちろん初めてのことです。色々な祝賀行事が佐賀城で行われたんですが、そんな時、直正公の元に江戸から一通の手紙が届きます。

マスター:ほう?

富田さん:
「この度は大変おめでとうございます」という文面。差出人は磯濱さんでした。この時、直正公41歳。磯濱さんへの返事の手紙が、きょうの言葉。「41年前の赤子、この通り、稀なるご褒美など蒙(こうむ)り候まで、ぴんぴんと致し候。婆さんなおさらめでたく存ずことに候」あの時の幼い子供が、お蔭様でこんなにまで成長したという感謝の言葉なんですね。

マスター:う~ん。

富田さん:
藩主となってもう25年も経っていたんですけれども、感謝を忘れない、感謝を伝えるというのが直正流。この時、磯濱さん75歳でした。

マスター:はぁ~。いい話ですねぇ~。

富田さん:
ただ、やはりこの頃体調を崩しがちな磯濱さんを気遣って、直正公は佐賀のお菓子やウナギ、貴重品である西洋のお薬なんかを佐賀から江戸まで贈っていたという記録も残ってるんですよね。

マスター:うう~ん・・・。

富田さん:
というわけでマスター。何ごとも「感謝」ですよ。マスターの気になっている女性を、そんなにステキに育ててくれたお母さんに、マスターも感謝しなきゃですね。

マスター:
いやぁ、確かにそうですねぇ。あぁ、そうそう、彼女のお母さんの写メもゲットしたんですけれども。見て下さいよ、これ。ね?ほら彼女にそっくりでしょう?

富田さん:
う・・・ご、ごご、ゴリ二つ・・・。いや、う、瓜二つですね。
じゃ、ご馳走様、マスター。

マスター:
あれっ、となるとお母さんでもいいってことなのかな?