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維新の「志」コンテンツコレクション

シーズン3 第25回 直正公の継室「筆姫(ふでひめ)」後編

2017年12月27日放送

 

富田さん:こんばんは~、マスター。

マスター:やぁ、富田さん。いらっしゃい。お待ちしていましたよ!

富田さん:直正公の再婚相手・16歳年下の筆姫さまのお話の途中でしたね。

マスター:
えぇ。江戸屋敷を離れ、佐賀城に入った筆姫さまに、大きな問題が待ち受けていた・・・って、早く続きを聞かせて下さいよ。

富田さん:
分かりました。佐賀に引っ越したばかりの筆姫さまの様子を、直正公は長女・貢姫さんに宛てた手紙でこう伝えています。「佐賀に来て以来、どこへも外出せず、寂しい日々を送っているようです」

マスター:やっぱり、江戸生まれ・江戸育ちの筆姫さまにとって、佐賀暮らしは、すぐには馴染めなかったんでしょうね。

富田さん:
しかも、人間関係でさらに問題が起きていたんです。直正公の手紙はこう続きます。「梅井や里という女中たち数人が、きょうにでも江戸に帰りたいと言って、筆姫も困っています。梅井にいたっては、筆姫の髪の手入れもしないので、松浦さんが一人でやっています」と。

マスター:
筆姫さまにお付きの女中さんたちも、みんな江戸に慣れた女性ばかりなので、突然、佐賀という場所に来て、動揺していたんでしょうね。

富田さん:えぇ。結局、仕事をボイコットしていた梅井・里など数人は江戸へ戻ってしまいます。

マスター:正室を佐賀に置きっぱなしにして、女中さんが帰っちゃうんですか!? さすがにそれは筆姫さまも怒ったでしょうね。

富田さん:
そうですね。ところが、しばらくすると少し状況が変わってきます。直正公は貢姫さんにこう伝えています。「筆姫も、ずいぶんと佐賀に慣れて、この間は川上の簗(やな)に行き、ことのほか楽しんだようです」

マスター:「やな」というと、鮎を捕る仕掛けですよね。

富田さん:
えぇ。そこにご家族でお出掛けをして、筆姫も楽しんでくれたようだと、直正公はホッと胸をなで下ろしているんです。直正公は、その後も、筆姫さまを佐賀城下にある鍋島家ゆかりの神社のお祭りにお忍びで連れて行ったり、現在の神野公園にあたる神野御茶屋、筑後川や伊万里、嬉野温泉にまで出掛けたこともありました。

マスター:筆姫さまが佐賀の土地に親しめるように、直正公も色々手を尽くしたんですね。

富田さん:
はい。そんな実直で優しい直正公に、ゆっくりと幸せが訪れます。筆姫さまが佐賀入りした翌年、息子の直大公が結婚して家族が増えます。そして、4年後の1868年、明治元年にあたる年。ついにあの愛しい長女・貢姫さんが実家の佐賀城に戻って来ることになったんです。7歳で江戸に出てから、実に23年ぶりの里帰りが実現したんです。約15年間にわたった直正公からの約200通の手紙も、その直前に終わっています。こうした時代の偶然によって、直正公は愛する佐賀で、正室・筆姫さま、長女・貢姫さん、息子の直大公夫妻や他のお子さまたちなど、短い間ではありましたが、愛する家族に囲まれた最晩年のひとときを過ごしたんです。

マスター:ホームドラマのような、ハッピーな映像が目に浮かびますね。

富田さん:
えぇ。ほどなく直正公は佐賀から東京に移り、そのまま明治4年の正月、病のため58年の生涯を閉じました。直正公亡きあと、筆姫さまはお孫さん2人の面倒をみながら、その後も明治の鍋島家を支え続けたんですね。というわけで、マスター、きょうまで、鍋島直正公をメインにいろんな人物や出来事を紹介してきましたが、いかがでしたか?

マスター:
いやぁ、直正公はもちろん、直正公をとりまく人々の素晴らしさ、そして何より、幕末維新期の佐賀のバイタリティというか、パワーにますます興味が沸きましたね。

富田さん:
それは嬉しいです!もうあと少しで2017年も終わりですが、来年、2018年は明治維新から150年を迎えます。これまでマスターにお話してきたとおり、鍋島直正公をはじめ、佐賀では幕末維新期に活躍した人物がたくさんいますよね。

マスター:うん。

富田さん:
明治維新150年を機に、改めてそうした佐賀の偉人や偉業を振り返って、未来にその志を伝えていこうと、「肥前さが幕末維新博覧会」が来年(2018年)3月から佐賀市を中心に開催されるんですよ。

マスター:それは行かないと!

富田さん:
僕は仕事の都合で、このお店には来れなくなりますが、来年の維新博の会場で、お会いできるかもしれませんね。じゃあ、ご馳走様でした。

マスター:ありがとうございました。「肥前さが幕末維新博覧会」かぁ。お年玉を貯めて、前売券を買わないとですね。